ご先祖様が建て、生まれ育った家を次の世代にも残すこと。それは日本建築の技術と美しさを残すことでもあります。木万里では100年以上の古家を、あと100年住み継ぐことのできる家として再生します。

古民家再生を振り返って
古民家再生への道のり

築120年の家を再生する

馬小屋と農作業部屋があった家

H様は先代まで農家でした。
一階が住居で、二階が農作業部屋になっています。二階の農作業部屋は養蚕やこんにゃく芋の乾燥室になっていました。またすでに改築されていた一階の玄関横の部屋は、馬小屋だった形跡がありました。

最初にこの家を訪れ外観を見たとき、古民家再生するに値する家だとは正直思いませんでした。30年前に一度リフォームをしていたため、昔の家の良い趣はなくなっていたためです。

また家は思った以上に曲がっていて、家の中の建具はしっかり閉まることが出来ない状態でした。その原因は家の構造材(柱など)にクリやケヤキが多く使われていたからです。ヒノキや杉は真っ直ぐ伸びる木ですが、クリやケヤキは曲がる癖があります。

家の中を拝見すると、梁は太く立派なものでした。冬の気象条件の厳しい豪雪地帯の家は、家を雪から守るため柱が太くなります。新潟に古民家が多いのはそのためです。世界遺産の白川郷の家が今でも雪に負けず建っているのは、柱や梁が太いためです。H様の家も、柱も梁も十分な太さがありました。

また居間の炉裏、蚕やこんにゃく芋を乾燥するための火があったために煤で梁は黒く光っていました。木は煙で燻製され、コールタールの油分で艶がでます。煙が防虫効果にもなり、梁や上層部に使われていた柱の木の傷みはほとんどありませんでした。
そして昔の日本の家では毎日の雑巾がけは当たり前でした。H様のお家も雑巾がけが日課だったのでしょう。人の手の届く範囲の柱や床は磨かれ、驚くほど艶がでていました。

太く、よく磨かれた梁や柱。この家は古民家再生をしたら面白くなると思いました。
説明画像
説明画像

問題点を解決することと、これからの生活を考えること

家づくりで一番大事なことは、丈夫で快適な家を作ることです。
築年数が古い大きな家の問題点は「強度がない」「冬の寒さ」「間取りの悪さ」「暗い」「急な階段」「水廻りの老朽化」「家の歪み」「立て付けの悪さ」「収納の少なさ」などがあります。この問題を改築で改善します。 そして「家の強度と快適性をあげること」と同じくらい大切なのが施主様の価値観を家に反映すること。「施主様が何を大事にして、どんな生活をしていきたいのか」を家づくりで表現することはとても大切なことだと木万里では考えています。 H様の要望に「楽しい家にしたい」というものがありました。打合せでの何気ない会話の中で、H様のご家族にとってどんな家が「楽しいのか」を想像します。仕事や趣味、家族、どんなことが好きなのか…。「今日の打ち合わせ、雑談ばかりで家のこと何も決まらなかったな。」なんて思う時も、実は木万里では家づくりのヒントを沢山もらっています。

古民家再生への道のり

現地調査
家の寸法を測り、既存の家の構造体の図面をおこします。土台や木の傷み具合を調べ、どこまで修繕するか決めます。また梁の位置を調べ、窓などの開口できる場所を探します。
 
プラン作り
既存の家を見ながら、施主様の意見を取りいれ、家のプランを提案します。プランが決定したのち、お見積りを提出します。
 
山から木を調達
伐採する前に設計図を見ながら木のおおよその必要な本数を計算しておきます。それをもとに使う材木の一覧表「木拾い書」を作成します。切った木は製材場に運び、カットしてもらいます。その後は自然乾燥で木を寝かせます。
詳しくはこちら
家の解体
土台、柱、梁、屋根を残し解体します。骨組みを残す必要があるので重機でどんどん壊していく、というわけにはいきません。手作業で壁をたたいて壊し、不要なものは外へ運びます。解体作業に4人で10日ほどかかりました。
詳しくはこちら
 
家の基礎づくり
家を持ち上げる「高あげ」をします。家をジャッキで約1m持ち上げ、基礎(家の下のコンクリート部分)を作ります。コンクリートの基礎をうった後、傷んだ土台の木を入れ替えます。その後、家を全部水洗いして埃を落とします。最後にワイヤーで「屋起こし」をして曲がった家を真っ直ぐにします。
詳しくはこちら
 
再生工事の現場から-1
いらない柱は抜き、必要な柱を入れます。梁は極力抜かずに使用します。柱の太さや間隔が違うなど、今の家では想像出来ないことが沢山ありました。家の基礎づくりが終わると新築では建前、上棟が終わった状況と同じになります。
詳しくはこちら
再生工事の現場から-2
工事が始まってから分かることも沢山あります。木の傷みが見つかったり、予想外の段差があったりすることも。工事をしながら施主様と相談しながら修正を行い、また内装などの細かい部分は家の様子を見ながら現地で決めていきます。
詳しくはこちら
 
古民家の完成
ご家族がまちに待った家が完成しました。木の伐採から始まり、1年以上の月日を費やした古民家再生。完成祝賀会が完成したH様邸で行われました。施主様のお父様の「感謝の念を伝えます。」の言葉に、職人達も感動です。
詳しくはこちら
 
古民家再生を振り返って
新築の家に比べると手間も倍、仕事も倍になるのが古民家再生。施主様も打ち合わせの回数が多く大変なこともあったかとは思いますが、充実した楽しい期間だったとお聞きしました。
詳しくはこちら

山から木を調達

山から木を調達
山から木を調達
山から木を調達
山から木を調達
山から木を調達
山から木を調達
山から木を調達
山から木を調達
山から木を調達
父が育てた木を息子が古民家再生に使う
H様は先代まで農業を営み、山を所有しています。施主様のお父様は自分の山の手入れをしつつ、長年森林組合につとめ、組合長も任されていました。
施主様のお父様は家の改築を始めた時は80歳後半。ご高齢ながらとてもお元気で、1人で、もしくは施主様と一緒に山に入り、木の樹齢や質を自分で見極め、伐採する木に1本ずつテープで印をつけていってくれました。ご先祖様が育て、自分で手入れをした山の木が使えるととても嬉しそうでした。木万里では樹齢80年以上の木が欲しいとお願いしました。施主様のお父様が印をつけた木の太さと長さの確認作業を木万里で行い、それから製材所に運びます。山から切った木はヒノキと杉、クリの木です。

家の解体

家の解体
家の解体
家の解体
家の解体
家の解体
家の解体
家の解体
家の解体
家の解体
住み慣れた家の骨格が見えてくる解体風景
家の解体は壁を落とすので家の強度がなくなるため、仮筋をいれての作業になります。
解体作業専門の業者に作業はお願いしていますが、今後の建築作業に必要なものと不必要なものの判別は解体作業者では難しいので、木万里で指示を出す必要があります。
そのため立ち合いで解体作業を指示します。解体前に施主様が必要なものは整理し運搬していましたが、解体作業中、思わぬところから桶などの民具が出てきて、保管するものと捨てるものの選別が必要になりました。解体作業は確認しながらゆっくりとしたペースで行われました。

関東地方の昔の家は土壁の中に補強をするため竹で編んだものを入れるのが一般的ですが、H様の家は竹の他に萱(かや)で編んだものが入っていました。(萱とはススキのことです。繊維が太く、丈夫です。屋根にしても50年はもちます。)このような作り方は木万里でも初めて見ました。H様のお住まいの辺りは萱(かや)が生えている土地です。昔の家は地元にあるものを有効に使いました。家づくりは地方によって異なるのはそのためです。屋根についても山間地は萱(かや)を使い、平地になると麦わらを、川沿いは葦(あし、またはよし)で作りました。

家の基礎づくり

家の基礎づくり
家の基礎づくり
家の基礎づくり
家の基礎づくり
家の基礎づくり
家の基礎づくり
家の基礎づくり
家の基礎づくり
家の基礎づくり
家の状態を確認しながら基礎・骨組みを修繕していきます
家を持ち上げる「高上げ」は鳶職人の仕事です。家の下に敷いてある木組みは「代木」と言って、鳶職人が用意するものです。これだけ大きな家を持ち上げる仕事は熟練の鳶でないと難しいです。昔の家は古材を利用するのが当たり前でしたので、鳶の仕事の中には家を引いたり、持ち上げたりする仕事もありました。しかし近年では家は全て壊し新築するのが当然になってしまったので、家を引く、持ち上げるという鳶の仕事は減っています。(鳶の仕事は主に構造物の組み立てが仕事です。基礎と足場、組み立てなどがあります。スカイツリーや東京タワー、マンションなども鳶が組み立てます。)

家を持ち上げてから、基礎を作るのに約一か月かかりました。昔の家はコンクリートの基礎はありません。柱の下に石が置いてあるだけです。それだけで家が120年も保っていました。家を支えていた石はそのまま残し、コンクリートの基礎を流し、乾いたところで家を降ろします。H様の家は、一部土地が下がっている場所がありました。玄関脇の元馬小屋と農作物を保管するための穴をあけた部分です。コンクリートの基礎を平らに打つために、穴を埋める作業も必要でした。古民家再生には古い家の知識も必要です。

再生工事の現場から-1

再生工事の現場から-1
再生工事の現場から-1
再生工事の現場から-1
再生工事の現場から-1
再生工事の現場から-1
再生工事の現場から-1
再生工事の現場から-1
再生工事の現場から-1
再生工事の現場から-1
伐採した木材と古材を使い古民家を再生していきます
古い家から残した木は筋違をいれ、足りない部分に柱を足していきます。解体をしてみて気付いたことは、柱の間隔や太さ、長さがばらばらだったこと。これが一番驚きました。 今の家のように同じ幅の木を使っていないので、柱の間隔も正確ではありません。昔は材木を山から運んで切るだけでも大変な作業でした。だから、ある材料に合わせて柱の間隔を変え、部屋の大きさを多少変えていくこともあったのだろう…と推測できます。 (例えば8畳の部屋が7.8畳になっているなど)。それでも最終的には基礎どおりの大きさの、しっかりした家をつくることができたのには驚きです。

再生工事の現場から-2

再生工事の現場から-2
再生工事の現場から-2
再生工事の現場から-2
再生工事の現場から-2
再生工事の現場から-2
再生工事の現場から-2
再生工事の現場から-2
再生工事の現場から-2
再生工事の現場から-2
細部にまでこだわりひとつ一つの作業を丁寧に仕上げます
古い木は煤で黒くなっていました。新しい木と古い木と色をあわせるために、新しい木に黒い塗装する案もありましたがやめました。塗装では天然の色は出せないからです。結果古い木の黒、新しい木の白に分かれてしまいましたが、意匠的にも面白くなりしっくりなじんでいます。
天井は予算的にクロスを使うことも考えていましたが、壁に漆喰が塗り終わると、クロスではこの家の雰囲気に合わないだろうと天井も全て漆喰になりました。ほぼ家が完成間近になったところで照明は再度選び直しをしました。施主様も工事前の設計図では、家のイメージを的確に想像し照明や内装を選ぶことは厳しいかと思いますが、実際の部屋を見ながらなので非常に分かりやすいと思います。

古民家再生 - その他のお話

清祓い
解体工事前に、今まで家族を守ってもらった家に感謝の気持ちを込め、神主様さんを招き、清祓いをします。
基礎の石
切石を並べただけの基礎。
外側の基礎の石は加工をしていない丸石。石の形にあわせ木を削りました。
朽ちている木
100年以上家を支えたクリの木。このように朽ちている木は入れ替えます。土台の木に関しては傷みが激しかったため、ほとんどの木を入れ替えました。
作業中の打ち合わせ
作業を進めながら、進捗状況を説明、報告。細かい部分の相談も現場を見ながら進めます。
昔の柱にあわせて
昔の柱にあわせて木の基礎に「ほぞ」を作って合わせます。
古い木と新しい木
黒い木が古い家のままの木。白い木が今回いれた新しい木。昔の木は煤で黒くなっています。長い間、家を支えていたりっぱな太い梁と柱です。
漆喰の壁
H様邸は全て漆喰の壁。80坪の家の広い壁を丁寧に塗っていきます。
わざと曲がった木を使う
家の雰囲気、意匠に合わせてわざと曲がった木を使用します。直線では面白みに欠けます。
上がりかまちが曲線の玄関
玄関スペースを考えて曲線になった上がりかまち。曲線は人に優しいイメージを与えます。
家の雰囲気に合わせて
キッチンの棚やカウンターなども家の雰囲気に合わせて作りました。
ご先祖様から受け継がれた大切な家。やむを得ぬ事情で解体の必要がある方もいらっしゃるかと思います。木万里では古民家の解体もお受けいたします。その際に「古材」を利用できるものと処分するものに分けさせて頂きます。
また、利用できる「古材」の買い取りも行います。一般の解体業者に頼んだ場合、価値のある「古材」までゴミとして廃棄処分になってしまいます。
愛着のある家の古材を、次の世代に残しませんか?。ぜひお気軽に相談下さい。
メールフォームはこちらから